Empower WOMEN! #2 今井道子
ひとりでも多くの女性が『自分らしく』いられる社会を目指し、女性エンパワーメントに取り組んでいる企業・団体にインタビューを行い、活動内容や展望を伺います。
今回は、女性ビジネス誌『プレジデントウーマン』創刊編集長だった今井道子さん。まだまだ男性向けのビジネス誌ばかりだった時代に、女性社員が結集して作り上げた本誌。現在も本誌の編集者として活躍する今井さんが、『女性』にフォーカスしていった経緯を伺いました。
◆Profile◆
今井道子/プレジデントウーマン編集部長・プレジデント主任編集委員/50代
拠点:東京
Q1:『プレジデントウーマン』の創刊経緯を教えて。
「男性向けビジネス雑誌の編集に25年間ほど携わった2014年ころ、取材先で「なぜ、女性向けのビジネス雑誌をつくらないのですか? あったらいいのになぁ」というお声をいただくようになっていました。そこで、女性の編集部員、販売担当、広告営業担当、マーケティング担当など女性ばかりの有志が平日の夜や休日に集まって企画書をつくり、社長室にもっていきました。社長は「君たちの熱意はよくわかった。これからいばらの道が待っているけれど、それでも最後までやり遂げるんだぞ」と言って、背中を押してくださいました。それから、社内外で何度かプレゼンを行い、提案したメンバーたちと一緒に山あり谷ありの日々をすごして、創刊の日を迎えることができました。」
Q2:女性のエンパワーメントに興味を持ったきっかけは?
「私が初めて管理職になったのは42歳のときでした。それまでは、この会社にいて5年後、10年後の自分の姿がよく見えていなくて、いつこの仕事をやめようかなと考えていた時期もありました。ですが、管理職になってから見えるようになった景色はそれまでとはまったく違うもので、1つの媒体を編集部員の力を結集してつくりあげていく面白さややりがいを感じるようになっていました。創刊前に大勢の読者の方々のお話を伺い、仕事と家庭の両立のむずかしさと、管理職になることへの不安な気持ちに直面していることを感じました。自分も同じように悩む一人として、そんな読者の皆さんを誌面を通じてエンパワーすることができたら、と思うようになりました。」
Q3:数多くの女性や会社を取材してきた今井さん。女性のエンパワーメントに対する意識や考え方に変化を感じている?
「働きやすい環境に変えていこうという社会や企業側の変化は感じます。しかしながら、女性を育てる役割を担っている一部の男性管理職の意識がなかなか変わらないという壁を感じます。それには時間がかかるというのが実感です。」
Q4:上記問題を解決するため、どのような企画をつくった?
「男性側のホンネ、女性側のホンネ、双方のギャップをまずは認識して理解しようという企画や、環境のせいにせずに、自分たちにできることは何か、どうすればよいのかについて考える企画、などをつくりました。」
Q5:プレジデント社が女性活躍のために行なっている社内での取り組み内容は?
「管理職の女性比率が約25%です。もう少し伸びて、『2020年までに女性管理職比率を30%に』という政府が掲げている目標に到達できるといいなぁと思います。」
Q6:日本企業で見ると、すでに『女性管理職約25%』という比率は高いですね。
「もともと出版業界は、ほかの業界に比べて小さいのだと思います。女性誌だけではなくて、書籍、新書、文庫編集部、食関連の編集部には女性も多いので、自然と管理職も増えていく環境にあると思います。」
Q7:今後、どのような活動をしていくか教えて。
「媒体だけではなくて、様々な機会を生かして、女性をエンパワーできるような活動を続けていきたいと思います。」
Q8:社会で活躍する女性は増えてきていると感じる?
「確実に増えていることを肌で感じています。たとえば、『プレジデントウーマン』や『プレジデントオンライン』で『女性役員の失敗は星の数ほど』という連載を掲載しています。企業の女性役員の方々が新たに次々と誕生されています。とてもうれしいことですよね。女性役員が誕生している会社では、業績が上がる、株価が上昇する、組織の効率が上がる、社内のコミュニケーションが活発になるという調査があります。その結果、女性たちが働きやすい環境が少しずつ整えられていくということを感じています。」
Q9:なぜ女性は男性に比べて、社会で活躍するにはハードルが高い(と思われがち)だと思う?
「女性は、男性よりも『家庭責任』が大きいと感じているため、社会での責任が重くなるほど、家庭責任との間で葛藤が起きて迷います。活躍できる能力をもっているのに、自身でも気づかないうちに足かせのような気持ちをもってしまうのではないでしょうか。」
Q10:今後、どのような女性が社会で活躍できると思う?
「人は経験を通して成長していくものですので、途中であきらめずに、どういう形であれ仕事を続けながら、さまざまな経験をご自身の中に蓄積することが大事だと思います。」
Q11:女性エンパワーメントがより一層前進するために、今の社会には何が必要だと思う?
「イギリスの研究者Hakimさんが女性が就職するときの将来展望を調査したところ、2割の女性がずっと仕事を続けたい、2割が結婚と同時に仕事をやめたい、残りの6割の女性は状況に応じてそのときに考える、という結果が出ています。女性の意欲が持続するか否かは、会社の制度・仕組みや上司の対応などによって、多様で可変的ということだと思います。
女性エンパワーメントが前進するためには、働きやすい環境を整えてあげること、そして機会を均等に与えて働きがいのある環境をつくることが大切だと思います。」
Q12:今井さんにとって『自分らしい』生き方・働き方とは?
「自分のことをよく知ろうとすること、そして、大切な人々とよく対話すること、かな?」
Q13:より多くの女性が『自分らしい』生き方・働き方をするために、社会に必要なことは何だと思う?
「女性も男性もこうあるべきという規制の価値観を壊してほしい。女性が成長して力を発揮することが、社会の成長や幸せにつながるということを理解していただきたいのです。」
Q14:世界各地に暮らす女性メンバーで成り立つlander laboに、今後期待する事があれば教えて。
「『自分らしく生きる』ことはときに難しいですが、とても大切なことと思います。女性が自分らしく生きるということは、ひいては男性にとっても幸せな社会に変化していくことだと感じています。ぜひ、『自分らしく生きる』ことの意味を世界に広げていただけたら嬉しいです。」
Q15:あなたのモットー(座右の銘のようなもの)は?
「『自分のやるべきことをやるという意思と勇気。人の声に私心なく耳を傾けるという謙虚さ。この2つがあれば知恵はこんこんと湧き出てくる。知恵は無限に湧き、無限に集まる』松下幸之助さんの言葉です。」
《編集後記》
ビジネス誌の創刊編集長ということで、きびきびした方を想像していましたが、とてもしなやかで素敵な女性でした。このしなやかさこそ、女性がもつ、社会を変える力のひとつではないかと感じました。(Sakiko from Tokyo)
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