Empower WOMEN! #3 田中美和
ひとりでも多くの女性が『自分らしく』いられる社会を目指し、女性エンパワーメントに取り組んでいる企業・団体にインタビューを行い、活動内容や展望を伺います。
今回は、女性3人で立ち上げた女性のための人材エージェント『Waris』共同代表、田中美和さん。フリーランスや主婦など様々なライフスタイルを持つ女性が、強みを生かした仕事をできるよう企業とのマッチングで支援している。『Waris』の強みや、田中さん自身が女性エンパワーメントに興味を持った理由、そして社会の課題について訊きました。
◆Profile◆
田中美和(@miwa_tanaka57)/(株)Waris共同代表、(一社)プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事、国家資格キャリアコンサルタント/40代
拠点:東京
Q1:『Waris』について教えて。
「Warisは多様な生き方・働き方をつくる人材エージェントです。フリーランス女性と企業のマッチング事業である『Warisプロフェッショナル』、離職女性の再就職支援事業である『Warisワークアゲイン』の2つのサービスを展開しており、登録者数は両サービスあわせて1万人以上、顧客企業は約1700社にのぼります。」
Q2:具体的な取り組み・支援内容を教えて。
「『Warisプロフェッショナル』は、広報・人事・マーケティングなどのビジネス系フリーランス女性と企業とのマッチングをしています。フリーランスというと、エンジニア・デザイナーなどのクリエイティブ系職種を思い浮かべる方が多いと思うのですが、Warisでは、非クリエイティブ系職種である広報・人事・マーケティングなどの職種でフリーランスになりたい女性たちを支援しています。Warisには1700社にのぼる顧客企業があるので、これらの企業での広報体制を強化したい・採用力を強化したい・新サービスの開発をしたいなどのニーズを把握し、適したフリーランスの方との仕事(プロジェクト)のマッチングをしています。すでにフリーランスで活躍中の方はもちろん、これからフリーランスになりたい会社員女性からも多数ご登録いただいています。
『Warisワークアゲイン』は現在離職中で『もう一度働きたい』女性たち(主に主婦の方)をインターンとして企業とマッチングをし、フィット感があればインターン終了後に社員として採用していただいています。これまでのインターン参加者はインターン終了後に9割以上が社員などの形で就業されていて高い評価を受けています。」
Q3:『Waris』ならではの強みとは?
「人生100年時代、価値観・生き方はますます多様化してきています。そんな多様に生きたい女性たちの想いに沿ったサービスである点がWarisの強みです。独立して個人の名前で仕事をしたい時期もあるでしょうし、離職し働くことから距離を置く時期もあるでしょう。そんな人生のさまざまなステージにおいてWarisは女性に伴走する存在でありたいと思います。」
Q4:女性のエンパワーメントに興味を持ったきっかけは?
「私たちWarisは女性3人で2013年に立ち上げた会社で、そのまま3人で共同代表をしているユニークな形です。私が個人的に女性のエンパワーメントに興味を持ったきっかけは前職時代の経験がもとになっています。大学卒業後に出版社に入社し、主に『日経ウーマン』という働く女性向け雑誌で編集記者をしていました。毎日のように働く女性たちの声を取材するなかで、女性たちが、不安や言葉にならないモヤモヤ、さまざまな葛藤を抱えながら生きていることに気づきました。『女性たちが生き生き働き続けられる社会づくりに貢献したい』という想いが今の事業につながっています。」
Q5:『Waris』を立ち上げる際、なぜ『女性』に限定した?
「Warisの創業は2013年ですが、当時は『働き方改革』という言葉が生まれる前のことで、長時間労働が常態化していました。そんななか、育児と仕事の両立に悩む女性たちが周囲に数多くいたため、女性たちが時間・場所にとらわれず、自分の名前で生きていくサポートができないかという想いから『フリーランス女性と企業とのマッチングサービス』としてスタートしました。」
Q6:『Waris』では数多くの女性を抱えているが、女性のエンパワーメントに対する意識や考え方に変化を感じる?
「YES。」
Q7:どのように変化していった?
「『女性のエンパワーメント』と言ったときに何を定義するかによるとは思うのですが、女性が働き続けやすい社会には変化してきていると感じます。実際、育休制度や短時間勤務制度の充実、女性をリーダー(管理職)として育成するカルチャーの醸成などの影響で明らかに辞める女性が減っていることは事実です。実際、Warisを創業した2013年当時は、統計資料によれば第一子出産とともに仕事を辞める女性は6割以上いましたが、現在は5割程度にまで減ってきています。
ただ、一方で、Warisは離職女性の復職支援事業『Warisワークアゲイン』も展開していますので、その観点から言うと、『一度離職した人がもともとやっていたような仕事に戻るのは引き続き難しい社会』ではあります。新卒一括採用・終身雇用制度が続いてきた日本では、キャリアにブランクのある離職人材の方は就職市場では避けられる傾向が強いのです。こうした社会的課題へのチャレンジとして私たちは『Warisワークアゲイン』事業に取り組んでいます。」
Q8:今後、どのような活動をしていくか教えて。
「引き続き、両サービスを通じて多様に生きたい女性たちを支援していくと同時に、新たな取り組みも考えています。具体的にはミレニアル世代の女性向けにキャリアコンサルティングプラットフォーム事業を考えています。キャリア相談をしたい女性たちと、そうした相談にのるキャリアコンサルタントや先輩起業家、女性管理職などとマッチング事業です。女性ならではのキャリアの悩みに寄り添ってきたWarisだからこそできるサービスにできればと思っています。」
Q9:社会で活躍する女性は増えてきていると感じる?
「YES。『働き続ける女性の割合』は明らかに増えていますし、管理職などのリーダー的立場にいる女性の比率も増えつつあります。これから5~10年後を考えると、役員や管理職などリーダー的立場で活躍する女性の数がますます増えるのではないかと期待しています。」
Q10:なぜ女性は男性に比べて、社会で活躍するにはハードルが高い(と思われがち)だと思う?
「育児・家事を主に女性が担っている(担うべきという価値観が根強い)ことと、外的サービス活用の土壌やカルチャーがない点が女性が活躍しきれない要因だと感じています。女性が時短やフリーランスなどのフレキシブルなワークスタイルを選択すると、それだけ育児・家事負担が押し寄せてきてしまって余計に大変になったという話も聞きます。現在進められている『働き方改革』が機能して、長時間の職場での拘束が男女ともに改善され、夫婦が対等なパートナーとして育児・家事・仕事に取り組める環境が整うことが大切だと感じています。」
Q11:今後、どのような女性が社会で活躍できると思う?
「これは女性に限らずですが、まずは『自分のキャリアの主導権を自分で握る』というマインドが求められると思います。かつてない長寿化の世の中を生きる私たちは働く期間も長くなります。20代前半で働き始めて、おそらく50年間くらいは働くつもりでいたほうがいいのではないでしょうか?そうなると、平均的な会社の寿命(東京商工リサーチによると平均23.5年)より個人の働く期間のほうが長いということになります。定年後も働き続けることを希望するのであれば、誰もが最後は個人事業主(フリーランス)になる可能性だってあるわけです。一方で、テクノロジーの進化により社会の変化のスピードは速く不確実性の高い時代を私たちは生きています。このためキャリアの主導権を他人任せ、会社任せにするのではなく、自分がしっかりキャリアの主導権を握って、主体的・自律的にキャリアをつくっていく感覚を持つことが個人として活躍するためにまず大切なことです。
そして『自らをアップデートし続けること』もあわせて重要です。せっかく学んだスキルや知識も数年で陳腐化していってしまうからです。
最後に『周囲とゆるやかにつながる力』も求められます。個の時代になればなるほど仕事でもプライベートでも互いに必要な情報を交換しあい、刺激しあい、支えあう周囲とのゆるやかな連帯が求められます。」
Q12:女性エンパワーメントがより一層前進するために、今の社会には何が必要だと思う?
「『時間・場所にとらわれない働き方』と、『時間ではなく成果で人を評価する仕組み』の両方の浸透が必要だと思います。現状の日本社会では、女性が家事・育児の主な担い手となる場合が一般的です。そのため長時間労働を解消し、男女ともに育児・家事にコミットできる状況にしていくことがまず求められます。
次に、在宅ワークやリモートワークを取り入れた自由なワークスタイルを企業が許容することも重要です。現状、日本におけるテレワーク導入企業の比率は調査にもよりますが全体の1~2割程度にとどまっています。育児・介護などで時間的制約のある人にとっては、通勤や移動時間の負荷を極力減らし、自由度高く仕事に集中できる環境が求められます。現状ではどうしても時間で成果をはかる企業が多いので、短時間勤務だと周囲から適正な評価が得られずストレスを抱えながら働く女性が少なくありません。時間ではなく、あくまで成果で人材を評価するしくみの構築も必要だと感じています。」
Q13:Warisが提唱する『自分らしい』生き方・働き方とは?
「『自分のキャリアは自分で選んで自分で決める』ということですね。数年前に女性フリーランスの幸福度について調査したことがあります。その際、個人の幸福度との関連性が強かったのは収入や労働時間の多い・少ないではなく、『今の自分がなりたかった自分かどうか』という軸でした。キャリア選択の際に、なんとなくではなく、自分のありたい姿にそって主体的に道を選んでいる方はそれだけ幸福度も高いことがわりました。ですから、キャリアの選択にあたっては、自分はどうしたいのか?どうありたいのか?という視点を大切にしたほうがハッピーに働けることを知っていただきたいです。それが自分らしく生きる・働くことにつながると考えています。」
Q14:世界各地に暮らす女性メンバーで成り立つlander laboに、今後期待する事があれば教えて。
「これからの時代、『働くこと』はますます時間・場所にとらわれないものになっていきます。実際、Warisは女性3人による共同代表制なのですが、3人とも東京・福岡・ベトナム(ホーチミン)と異なる都市に生活しており、メンバーも北海道・関東圏・九州などに点在している状況です。それでも同じ想いを持ってリモートベースで働くことは可能です。ただ、まだまだこうしたスタイルは少数派。lander laboさんには時間・場所にとらわれず自由に働くこれからのワーク&ライフスタイルを体現&発信していただければうれしいです!」
Q15:あなたのモットー(座右の銘のようなもの)は?
「Follow your heart!(自分の心の声を聴く)」
《編集後記》
長きに渡って女性の社会推進に携わり、周囲の女性に耳を傾けてきた田中さんだからこその考えや、具体的な問題点が明確で私自身とても勉強になりました。女性フリーランスの幸福度は『今の自分がなりたかった自分かどうか』が軸になるという回答を頂き、私はどうだろうか?と考えてみました。なれている部分とまだ達成できていない部分ありますが、これからも人生の主導権を自分で握り、女性として誇りを持って社会と携わっていきたいと、改めて気が引き締まります。(by ELIE from Paris)
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