あなたはなぜその国へ? 〜ルーマニア編〜
海外移住をした女性たちへインタビュー。今回は、小さい頃からの夢を叶えヨーロッパでバレエダンサーとして活動する合田紗希さん。ドイツ、ポルトガルを経て現在はルーマニア在住の彼女に、バレエダンサーとしての日常を伺いました。
◆Profile◆
合田紗希 (@atosakii)/バレエダンサー/30代
拠点:ルーマニア/5年
Q1:その国に移ろうと決めたきっかけは?
「日本のバレエ団に所属していた時にヨーロッパのダンスカンパニーに所属している友人たちの話を聞いてヨーロッパのダンスシーンに興味を持ち、初めにベルリンへ渡りました。その後リスボンのダンスグループに参加した後に、知人の紹介でポルトガルのマデイラ島で2年間バレエ教師をしていました。また舞台に立ちたいと感じ、ルーマニアの国立バレエ団に応募し採用されたのでルーマニアに移ることを決めました。」
Q2:移住後、どんな仕事をしている?
「バレエダンサーとしてコンスタンツァという黒海沿岸の街の劇場で働いています。バレエ、オペラの公演共にそれぞれ月2回ほどあります。オペラのダンスシーンでも踊ります。週5日間、練習時間はその時々によって違いますが、大体朝10時半から16時くらいまでです。」
Q3:移住の決め手となった一番の動機と移住の方法は?
「ヨーロッパの劇場で踊りたいというのが小さい頃からの夢の一つでした。」
Q4:移住前と後、最もギャップを感じたことは?
「バレエ団に採用され移住するまで一度もルーマニアに行ったことがありませんでした(送った映像だけで採用されて移住しました)。コンスタンツァに降り立った時ヨーロッパの可愛い街を想像していたのですが、街が閑散とし、共産主義時代の名残からか同じようなグレーの四角い建物が多く暗い印象で驚きました。ルーマニアがラテンの国だとも知らず、静かな雰囲気の国だと思っていたので人々の陽気さや言語がポルトガル語に似ていることなどにも驚きました。」
Q5:実際移住してから見出した、その国の魅力とは?
「劇場文化が街に根付いていることです。私たちの劇場では毎週末にオペラやバレエ、オーケストラの舞台がありいつも活気があります。街中でも舞台を観たよと声をかけてくれる方がいたり、劇場に来ることを楽しみにしてくれているように感じます。お客さんにとっても何かを発散する場所になっているのかなと思います。人々が生活に劇場や踊りを必要としてくていると感じられることはとても嬉しいことです。また、ルーマニア人はよく気軽に人に声を掛けます。パン屋のおばさんが元気?と声を掛けてくれたり バスの中で帽子を被らないと風邪をひいちゃうよと話しかけられたり、人の温かさを街中で感じることができます。」
Q6:その国に住んでて「正直これはキツイ...」と感じることは?
「年に何度かお湯が出ない日が続くことや、水が止まることも稀にあります。停電も。。。でもこのような不便なことからゆっくりとした時の流れを感じられます。停電の時に住んでいるアパートの窓から多くの人が外を眺めていて、なんだかいいなと感じました。」
Q7:日本にもあったらいいのに、と思うその国の魅力的なサービスは?
「サービスではありませんが、人柄に魅力を感じることがあります。困った人がいたら躊躇せず助けようとする人が日本に比べ多いと感じます。お店に入る時や、スーパーでお金を払う時も店員さんに挨拶をしたり、言葉を交わす機会が日本より多いです。また公共の場で子供や赤ちゃんが泣いていても全く嫌な顔をする人はいません。大きなベビーカーでバスに乗ってきて、バスがどれだけ混んでいたとしてもみんな温かい目で見守っています。」
Q8:ポルトガル、ルーマニアで生活をした経験の中で、日本の文化・風習と最も違うのはどの国のどういったところ?
「ポルトガルでの話になるのですが、ポルトガルでは仕事やお金の生産性よりも、そこにある時間を楽しむことを大事にしている人が多いということがとても印象的でした。仕事の合間、昼食にとてもゆっくり時間をかけてレストランで食べたり、煮詰まったらみんなでcafeに行ったり、時には海を見に行くことも。夜ご飯もゆっくり時間をかけて食べる。同じ24時間のはずなのに全く時間の使い方が日本と違うと感じました。日本にいた時、私はいつも急いでいて、何を持っているか、世間的に成功しているかなどに焦点を当てていました。しかしポルトガルの人々はそんなことよりも自分自身が何を感じて、何を楽しいと思うかを大事にしていると感じました。それは驚きでした。そしてそのポルトガルとの出会いが私の人生観を変えた出来事だったと思います。」
Q9:海外をベースにリモートで働くといったワークスタイルについてどう思う?
「自由に働く場所を選べること、世界中の様々な場所にいる人と繋がりながら仕事ができることは新しい閃きにも繋がると感じます。とても魅力的な働き方だと思います。」
Q10:ルーマニアに住んだり働くにはどんなビザが必要?
「就労ビザ。配偶者ビザ。学生ビザ。ボランティアビザ。」
Q11:その国で働くのに必要な心構えと、身につけたいスキルは?
「英語が通じないことも多々あるので、日常会話程度のルーマニア語。会話をすることが好きな人が多いので、流暢でなくても積極的に喋るといいと思います。また私の働いているバレエ団では、練習予定が出るのが1週間前、舞台スケジュールが出るのは1ヶ月前と予定がなかなか立ちません。計画をして何かをするという習慣があまりないように感じるので、臨機応変に対応することが必要になると思います。」
Q12:その国で、日本人の強みを活かしたおすすめの職業はある?
「バレエダンサー。日本人バレエダンサーはテクニックが強く、また真面目な性格がルーマニアで好まれます。またコンスタンツァではまだ日本の文化や日本食はあまり普及していないように感じますが、首都ブカレストでは、日本食材店、日本食レストランも盛んで、回転寿しのお店もあり、11月には日本の文化月間ということで様々な催しが行われました。そういった日本食レストラン、食材店、また日本語を習いたい方も増えてきているようなので日本語教師や料理人もいいと思います。」
Q13:あなたは10年後どこで何をしていると思う?
「どこにいるかはわかりませんが、どこにいても踊りに携わっていきたいと思っています。どういう形かはまだわかりませんが、沢山の人が『踊る』ということを感じられるような手伝いがでいたらいいなと思っています。」
Q14:海外に移住したい、海外で働きたい人に向けて一言声をかけるとしたら?
「私は海外に出てから外国人の親しい友人が何人もできました。言葉がそこまで通じなくても気持ちが通じたと感じられることもあり、彼らを通してその国の文化を感じることもでき、それぞれの国で出会えた友人は宝物です。また人との出会いのみならず、それぞれの土地、場所の空気によって変わる自分自身を感じれたこともいい経験でした。ぜひ色々な場所で沢山の人や場所に出会ってみてください。新しい自分にも出会えると思います。」
Q15:あなたのモットー(座右の銘のようなもの)は?
「瞬間を踊る。」
《編集後記》
厳しい芸術の世界。狭き門をくぐりぬけて、まったく見知らぬ地へ渡った合田さん。やりたいことが定まっていれば、場所は関係ないのは、リモートも芸術も同じですね。いつか合田さんの踊りを日本でも見る日がきますように!(by Sakiko from Tokyo)
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